法規は「覚えることが多くて手がつかない」と敬遠されがちですが、国家試験で問われる範囲はかなり限られています。法令からは毎回まとまった数が出題され、しかも同じ論点が繰り返し問われます。
そして、多くの問題は丸暗記をしなくても解けます。鍵になるのは「その法律は誰を守るためにあるのか」という一点です。ここが分かれば、「この規定はどの法律か」という形の問題はほぼ落としません。
この記事では、診療放射線技師法と医療法を扱います。RI規制法と電離放射線障害防止規則は、別の記事「RI規制法と電離放射線障害防止規則」(準備中)で扱います。
まず、法律を「誰を守るか」で仕分ける
法律は「誰を守るか」で役割が決まっている。健康診断は従事者を守る法律(電離則・RI規制法)、病院の中の体制は医療法。
放射線に関係する法律は、役割がきれいに分かれています。
- 診療放射線技師法 … 技師の資格と業務範囲を定める。誰が、何をしてよいか
- 医療法 … 患者と医療の安全を守る。病院の構造設備や安全管理体制
- RI規制法(放射性同位元素等規制法)… 放射線障害の防止。RI や放射線発生装置の使用
- 電離放射線障害防止規則(電離則)… 働く人の健康。労働安全衛生法にもとづく規則
- 医薬品医療機器等法 … 医薬品・医療機器の品質と安全。作る側・売る側を規制する
この仕分けだけで解ける問題が、実際に出ています。
- 健康診断を定めているのはどの法令か → 電離則と RI規制法。どちらも「従事者を守る」法律だからです。医療法は患者を、技師法は資格を扱うので、健康診断は出てきません
- 医療機器安全管理責任者の配置を義務づけるのはどの法律か → 医療法。「病院の中の体制 = 医療法」と覚えます
もうひとつ、境目を決めている数値があります。RI規制法と電離則が「放射線」と定めるのは、電子線・X線とも 1 MeV 以上のものです。診断用X線は 1 MeV 未満なので、これらの法律ではなく医療法が担当します。法律の守備範囲が分かれている理由がここにあります。
診療放射線技師法:どこまでやってよいか
静脈路は確保できるが、動脈路は確保できない。同じ静脈路でも採血のためなら認められない。
診療放射線技師の業務範囲は、平成27年と令和3年の法改正で広がりました。ただし無制限に広がったわけではなく、判断の軸ははっきりしています。
画像診断・治療に付随する行為かどうか
できるようになったこと
- 造影剤:静脈路に造影剤注入装置を接続し、装置を操作して投与、投与後の抜針・止血(平成27年)。接続するための静脈路の確保(令和3年)
- RI医薬品(核医学検査):放射性医薬品を投与するための装置を静脈路に接続し(静脈路の確保を含む)、装置を操作して投与、投与後の抜針・止血まで(令和3年)
- 下部消化管検査:肛門へのカテーテル挿入と、造影剤・空気の注入(平成27年)。注入した造影剤・空気の吸引(令和3年)
- 上部消化管検査:挿入した鼻腔カテーテルからの造影剤注入と、そのあとの抜去(令和3年)
- 動脈路への造影剤注入装置の接続と操作(令和3年。動脈路の確保は含まない)
いずれも医師の具体的な指示のもとで行います。また、令和3年の改正で加わった行為は、令和6年4月1日より前に免許を受けた技師は、あらかじめ厚生労働大臣が指定する研修(告示研修)を受けないと行えません。
できないこと
- 採血のための静脈路確保。画像診断のためではないので認められません
- 動脈路の確保そのもの
- アドレナリンの筋肉内投与。これは医師の行為です
とくに 静脈路と動脈路の線引きが最頻出です。「造影剤を入れるための静脈路はよい、動脈路はだめ」と覚えてください。
そのほか、技師法でよく問われるのが次の2点です。
- 業務を行う場所は原則として病院・診療所ですが、健康診断のための巡回や、医師の立会いのもとでの往診など、例外があります。「限定される」という選択肢は誤りです
- 守秘義務は、診療放射線技師でなくなった後も続きます。「技師でなくなった後はこの限りでない」という選択肢は誤りです
手続きの期限は「5 日」と「30 日」
返すのは 5 日、届け出るのは 30 日。選択肢では入れ替えて出されるので、2つをセットで覚える。
技師法では、手続きの期限がそのまま問われます。覚え方は単純で、「返す」のは 5 日、「届け出る」のは 30 日です。
5 日以内(返納)
- 免許を取り消されたときの免許証の返納
- 免許証の再交付を受けたあとに旧免許証を見つけたときの返納
30 日以内(届出・申請)
- 登録事項に変更が生じたときの訂正申請
- 死亡したときの技師籍の登録削除申請
もうひとつ、免許を与えるのは厚生労働大臣です。都道府県知事ではありません。国家資格なので国が出す、と考えれば迷いません。
なお、RI規制法の放射線障害予防規程を変更したときの届出も 30 日以内で、こちらは原子力規制委員会あてです。
医療法:3つの線量基準は「場所」で使い分ける
内側から外側へ、1 mSv/週 → 1.3 mSv/3月 → 250 µSv/3月。どの場所の基準かで使い分ける。
医療法施行規則の構造設備基準では、似た数値が3つ出てきます。どこの基準かで使い分けるのが要点です。
| 場所 | 実効線量の限度 |
|---|
| エックス線診療室の画壁等の外側 | 1 mSv /週 |
| 管理区域の境界 | 1.3 mSv /3 月 |
| 病院内の人が居住する区域・敷地の境界 | 250 µSv /3 月 |
診療室の画壁だけが「週」あたりなのが特徴です。診療室は撮影のたびに使う部屋なので、週単位の管理がなじむためだと考えると覚えやすくなります。
そして 管理区域の定義そのものも問われます。
実効線量が 3 月間につき 1.3 mSv を超えるおそれのある区域
なお、1 mSv/年 は公衆の線量限度という防護の原則の数値であって、構造設備基準の数値ではありません。選択肢に紛れ込みます。
もうひとつ、非密封RIの貯蔵容器についての数値があります。
容器の表面から 1 m の距離における実効線量率が 100 µSv/h 以下
「容器の表面で」ではなく「1 m の距離で」です。ここを読み違えさせる出題がされています。
医療法上の装置等の分類
最頻出のひっかけは RALS。これは「診療用放射線照射装置」であって、「診療用高エネルギー放射線発生装置」ではない。
医療法では、放射線を出すものが区分され、それぞれに届出や構造設備の基準が定められています。
| 区分 | 該当するもの |
|---|
| エックス線装置 | X線CT装置・一般撮影装置・透視装置 |
| 診療用高エネルギー放射線発生装置 | リニアック(直線加速器) |
| 診療用粒子線照射装置 | 陽子線・重粒子線照射装置 |
| 診療用放射線照射装置 | RALS(遠隔操作式後充填装置) |
| 診療用放射線照射器具 | ¹²⁵I シード・¹⁹²Ir 線源 |
| 診療用放射性同位元素 | SPECT 用の放射性医薬品 |
| 陽電子断層撮影診療用放射性同位元素 | PET 用の放射性医薬品 |
大きな分かれ目は、電気で放射線を作るのか、密封された放射性同位元素を使うのかです。
- 電気で作る … 高エネルギー放射線発生装置(リニアック)、粒子線照射装置
- 密封線源を使う … 照射装置(RALS)、照射器具(シード・線源)
RALS は密封小線源を使う装置なので、「診療用放射線照射装置」に入ります。名前に「高エネルギー」とあると引っかかりやすいのですが、高エネルギー放射線発生装置はリニアックなどの加速器を指します。
なお、照射装置と照射器具は、装備する放射性同位元素の数量で分かれます(多いほうが装置)。
診療用放射線に係る安全管理体制
柱は4本。研修は「1 年に 1 回以上」。線量管理の対象は被ばくが多い装置だけで、一般撮影は入らない。
2020年から、医療法施行規則に「診療用放射線に係る安全管理体制」の規定が加わりました。柱は4本です。
- 医療放射線安全管理責任者の配置(原則として常勤の医師または歯科医師)
- 診療用放射線の安全利用のための指針の策定
- 研修(1 年に 1 回以上。過剰被ばくなど事例発生時の対応も含む)
- 線量管理・線量記録
ここで狙われるのが2つの数字と範囲です。
- 研修は 1 年に 1 回以上。「2 年に 1 回」という選択肢が誤りとして出ます
- 線量管理・記録の対象は、被ばくが多い装置に限られます。CT・血管撮影装置・透視装置・核医学装置(PET を含む)が対象で、一般撮影は対象外です
また、病院には3人の安全管理責任者がいて、なれる職種が違います。
| 責任者 | なれる職種 |
|---|
| 医療放射線安全管理責任者 | 原則として常勤の医師・歯科医師 |
| 医療機器安全管理責任者 | 医師・歯科医師・薬剤師・看護師・診療放射線技師・臨床工学技士など |
| 医薬品安全管理責任者 | 医師・歯科医師・薬剤師など |
医療放射線のほうは原則として医師・歯科医師ですが、医療機器のほうは診療放射線技師でもなれます。ここを入れ替えた選択肢が出ます。
試験で問われやすいポイント
| 論点 | 覚える形 |
|---|
| 健康診断を定める法令 | 電離則・RI規制法(従事者を守る法律) |
| 病院の安全管理体制 | 医療法 |
| 法が定める放射線 | 電子線・X線とも 1 MeV 以上(RI規制法・電離則) |
| 技師の業務範囲の軸 | 画像診断・治療に付随する行為か |
| 静脈路と動脈路 | 静脈路は確保できる。動脈路は不可 |
| RI医薬品 | 静脈路の確保から、装置での投与、抜針・止血まで可 |
| 採血のための静脈路 | 不可(画像診断のためではない) |
| 守秘義務 | 技師でなくなった後も続く |
| 業務を行う場所 | 原則 病院・診療所だが例外あり |
| 返納 | 5 日以内 |
| 変更の届出・死亡時の申請 | 30 日以内 |
| 免許を与えるのは | 厚生労働大臣 |
| 診療室の画壁等の外側 | 1 mSv/週 |
| 管理区域の境界 | 1.3 mSv/3 月(管理区域の定義そのもの) |
| 居住区域・敷地の境界 | 250 µSv/3 月 |
| 非密封RIの貯蔵容器 | 表面から 1 m で 100 µSv/h 以下 |
| RALS の区分 | 診療用放射線照射装置 |
| 安全管理体制の研修 | 1 年に 1 回以上 |
| 線量管理の対象 | CT・血管撮影・透視・核医学(一般撮影は対象外) |
まとめ
- 法律は誰を守るかで仕分ける。従事者 → 電離則・RI規制法、病院の体制 → 医療法、資格 → 技師法
- 技師の業務範囲は画像診断・治療に付随する行為に限られる。静脈路は可、動脈路は不可
- 手続きは返納 5 日、届出 30 日。免許を与えるのは厚生労働大臣
- 医療法の線量基準は場所で使い分ける。1 mSv/週(画壁)/1.3 mSv/3月(管理区域)/250 µSv/3月(敷地)
- 管理区域の定義は 1.3 mSv/3 月を超えるおそれのある区域
- RALS は照射装置。高エネルギー放射線発生装置ではない
- 安全管理体制は責任者・指針・研修・線量管理の4本。研修は 1 年に 1 回以上、一般撮影は線量記録の対象外
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