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基礎医学

内分泌の解剖・生理(ホルモンと分泌腺・バセドウ・クッシング)

内分泌はホルモンの名前が多くて敬遠されがちですが、「どの腺が、どのホルモンを、何のために出すか」と、「出しすぎ・出なさすぎをどう調節するか(フィードバック)」の2つをおさえると、バセドウ病やクッシング病まで一本の理屈でつながります。この記事はその順で整理します。

内分泌とは:血液に出すか、導管に出すか

腺(分泌する器官)は、分泌物の出し方で2種類に分かれます。

  • 内分泌腺 … ホルモンを血液の中へ直接出す。導管(くだ)を持たない。例:甲状腺・副腎・下垂体
  • 外分泌腺 … 分泌物を導管を通して体の表面や管腔へ出す。例:汗腺・涙腺・唾液腺(顎下腺)・乳腺

ホルモンは血液に乗って全身をめぐり、決まった相手(標的器官)だけに効きます。

内分泌腺の全体像

おもな内分泌腺は、頭からお腹まで散らばっています。まず場所を押さえましょう。

おもな内分泌腺の位置 おもな内分泌腺の解剖図。左は頭頸部で、脳の中央に視床下部と下垂体、首に甲状腺とその裏の副甲状腺がある。右は体幹で、左右の腎臓の上に副腎、中央に膵臓、骨盤内に性腺がある。 視床下部 全体の司令塔 下垂体 前葉・後葉から各種ホルモン 甲状腺 のどぼとけの下 副甲状腺 甲状腺の裏に4つ 副腎 腎臓の上に乗る 膵臓 ランゲルハンス島 性腺 卵巣・精巣 左=頭頸部 右=体幹(腎臓は内分泌腺ではない)
図1:おもな内分泌腺の位置。左=頭頸部(視床下部・下垂体・甲状腺・副甲状腺)、右=体幹(副腎・膵臓・性腺)。

それぞれの腺が出すおもなホルモンとはたらきは、次のとおりです。

分泌腺おもなホルモンはたらき
視床下部各種の放出ホルモン下垂体を調節する
下垂体前葉成長ホルモン/TSHACTH/プロラクチン/性腺刺激ホルモン各標的腺を刺激する
下垂体後葉抗利尿ホルモン(ADH)/オキシトシン水の再吸収/子宮収縮
甲状腺甲状腺ホルモン(T3・T4)/カルシトニン代謝を上げる/血中カルシウムを下げる
副甲状腺副甲状腺ホルモン(PTH)血中カルシウムを上げる
副腎皮質コルチゾール/アルドステロン/アンドロゲン血糖↑/ナトリウム保持/性ホルモン
副腎髄質アドレナリン/ノルアドレナリン心拍・血圧を上げる
膵臓(ランゲルハンス島)インスリン/グルカゴン血糖を下げる/上げる
性腺エストロゲン・プロゲステロン/テストステロン生殖機能

膵臓のホルモン(インスリン・グルカゴン)は消化器の記事で、性腺と月経周期は泌尿・生殖器の記事でくわしく扱っています。

ホルモンの調節:ネガティブフィードバック

ホルモンは多すぎても少なすぎても困るので、体は「出しすぎたら止める」という仕組みで一定に保っています。これがネガティブフィードバックです。甲状腺を例にすると、こうなります。

視床下部・下垂体・甲状腺のフィードバック 上から視床下部、下垂体前葉、甲状腺の順に下向きの矢印でつながる。視床下部がTRHを出して下垂体を刺激し、下垂体がTSHを出して甲状腺を刺激し、甲状腺が甲状腺ホルモンを出して全身の代謝を上げる。左側では、甲状腺ホルモンが増えると赤い破線の矢印が上へのび、下垂体と視床下部の分泌を抑える。これがネガティブフィードバック。 視床下部 放出ホルモン(TRH)を出す 下垂体前葉 刺激ホルモン(TSH)を出す 甲状腺 甲状腺ホルモン(T3・T4)を出す 全身:代謝が上がる 体温・心拍・エネルギー消費↑ 刺激 刺激 ネガティブ フィードバック ホルモンが増えると 上流を抑える(⊖)
図2:視床下部 → 下垂体 → 甲状腺の調節。甲状腺ホルモンが増えると、上流の下垂体と視床下部を抑える(ネガティブフィードバック)。

この仕組みがわかると、「ホルモンが多いのに、刺激ホルモンは少ない」という一見おかしな組合せが理解できます。標的腺(甲状腺)自身が勝手に出しすぎているとき、上流の下垂体は「もう出すな」とブレーキをかけるからです。これが次のバセドウ病の理解につながります。

甲状腺とバセドウ病

バセドウ病は、抗TSH受容体抗体という自己抗体が、甲状腺のTSH受容体を刺激し続ける病気です。TSHの代わりに抗体がアクセルを踏みっぱなしにするので、甲状腺ホルモンが出すぎます(甲状腺機能亢進症)。

  • 甲状腺ホルモン(FT3・FT4)… 上昇(病気の本体)
  • 抗TSH受容体抗体 … 上昇(原因物質・診断の決め手)
  • 心拍数 … 増加(代謝が上がるため頻脈・動悸)
  • TSH低下

TSHだけが下がるのがポイントです。甲状腺ホルモンが多すぎるので、ネガティブフィードバックで下垂体がTSHを止めるからです。

副腎とクッシング

副腎は腎臓の上に乗る小さな臓器で、外側の皮質と内側の髄質でまったく別のホルモンを出します。皮質はさらに3層に分かれ、外から順に別のホルモンを担当します。

副腎の層構造とホルモン 副腎の断面の模式図。外側から順に、皮質の球状層がアルドステロン、束状層がコルチゾール、網状層がアンドロゲンを出し、いちばん内側の髄質がアドレナリンとノルアドレナリンを出す。 髄質 皮質・球状層 アルドステロン(Na保持) 皮質・束状層 コルチゾール(血糖↑) 皮質・網状層 アンドロゲン(性ホルモン) 髄質 アドレナリン(心拍・血圧↑) 外側3層=皮質 いちばん内側=髄質
図3:副腎の層構造。外側の皮質は3層(球状層=アルドステロン、束状層=コルチゾール、網状層=アンドロゲン)、内側の髄質はアドレナリン。

このコルチゾールが出すぎると起こるのがクッシング症候群です。原因はいくつかありますが、国家試験では次の区別が問われます。

  • クッシング病下垂体の腺腫からACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が出すぎ、その刺激で副腎がコルチゾールを過剰に作る。原因は下垂体
  • クッシング症候群 … コルチゾールが過剰な状態全般。副腎腫瘍やステロイド薬によるものも含む、より広い言葉

コルチゾール過剰では、満月様顔貌・中心性肥満・皮膚線条・高血糖・高血圧・骨粗鬆症などが起こります。

まとめ

  • 内分泌腺はホルモンを血液へ直接出す(導管なし)。汗腺・涙腺・唾液腺などの外分泌腺(導管あり)と区別する
  • ホルモンはネガティブフィードバックで一定に保たれる。「出すぎたら上流を止める」
  • バセドウ病は抗TSH受容体抗体で甲状腺ホルモンが過剰。フィードバックでTSHだけ低下(ホルモン高値・刺激ホルモン低値=原発性)
  • 副腎皮質は3層(球状層アルドステロン・束状層コルチゾール・網状層アンドロゲン)、髄質はアドレナリン
  • クッシング病=下垂体のACTH過剰クッシング症候群=コルチゾール過剰の状態全般。ステロイドの副作用はこれと同じ(尿管結石は含まない)

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