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放射線計測学

放射線検出器の基礎と気体検出器(電離箱・比例計数管・GM計数管)

放射線計測は、国家試験で毎年10問以上出ているのに、苦手な人が多い分野です。理由ははっきりしていて、検出器の名前と特徴を、バラバラの丸暗記で覚えようとするからです。

しかし実際には、気体検出器の3つ(電離箱・比例計数管・GM計数管)は、構造がほとんど同じで、違うのはかける電圧だけです。この1枚のグラフを理解してしまえば、3つの性格の違いは全部そこから出てきます。

計測学シリーズの1本目として、その土台を整理します。

放射線は「変換してから」測る

まず大前提です。放射線そのものは目にも見えず、手でも触れません。だから測定器は必ず、放射線を何か別のものに変えてから測ります。

変換のしかたで、検出器は大きく3つに分かれます。

放射線検出器の3つの分類放射線検出器を、放射線の何を捕まえるかで3つに分けた図。1つめは気体の電離を使うもので、気体の中にできたイオン対を電極で集めて電流にする。電離箱、比例計数管、GM計数管があり、印加電圧の違いだけでこの3つに分かれる。2つめは発光すなわちシンチレーションを使うもので、結晶が出す光を光電子増倍管や半導体で電気信号に変える。ヨウ化ナトリウム、BGO、LSO、プラスチックなどがある。3つめは固体や化学の変化を使うもので、結晶の中に残った跡や溶液の化学変化をあとから読み出す。半導体、熱ルミネセンス線量計、蛍光ガラス線量計、OSL、フリッケ線量計、フィルムなどがあり、その場では読めずあとで読み出すものが多い。検出器は「放射線の何を捕まえるか」で3つに分かれる放射線そのものは目に見えないので、必ず別のものに変換してから測る気体の電離気体の中にできたイオン対を電極で集めて電流にする電離箱比例計数管GM計数管印加電圧のちがいだけで、この3つに分かれる発光(シンチレーション)結晶が出す光を、光電子増倍管や半導体で電気信号に変えるNaI(Tl)BGO・LSOプラスチック光に変える段階があるのが特徴固体・化学の変化結晶の中に残った跡や、溶液の化学変化をあとから読み出す半導体(Si・Ge・CdTe)TLD・蛍光ガラス・OSLフリッケ線量計・フィルムその場では読めず、あとで読み出すものが多い
検出器は放射線の何を捕まえるかで3つに分かれる。気体の電離を使うもの、発光を使うもの、固体や化学の変化を使うもの。

① 気体の電離を利用するもの … 放射線が気体を通ると、気体の分子から電子がはじき出されてイオン対ができます。これを電極で集めれば電流になります。電離箱・比例計数管・GM計数管がこれです。

② 発光(シンチレーション)を利用するもの … 特定の結晶は、放射線が当たるとかすかな光を出します。この光を光電子増倍管などで電気信号に変えます。NaI(Tl)・BGO・LSO など。

③ 固体や化学の変化を利用するもの … 結晶の中に残った跡や、溶液の化学変化を、あとから読み出します。半導体・TLD・蛍光ガラス線量計・OSL・フリッケ線量計・フィルムなど。その場では読めず、あとで読み出すものが多いのが特徴です。

気体検出器:かける電圧だけで性格が変わる

ここが計測学の山場です。

印加電圧と集まる電荷の関係気体検出器にかける電圧を横軸、集まる電荷の量を対数目盛の縦軸にとったグラフ。α線とβ線の2本の曲線を描いている。電圧の低いほうから順に6つの領域がある。第1領域は再結合領域で、イオンが電極に届く前にくっついて戻ってしまうため使わない。第2領域は電離箱領域で、できたイオンをすべて集めきる飽和状態になり、電離箱が使う。第3領域は比例領域で、電子なだれによる増幅が起こり、元の電離量に比例した出力が得られる。比例計数管が使う。第4領域は制限比例領域で、比例関係がくずれ始めるため使わない。第5領域はGM領域で、放射線が1個入れば必ず同じ大きさのパルスが出る。ここではα線とβ線の曲線が重なるため線種が区別できない。GM計数管が使う。第6領域は連続放電領域で、放電が止まらず検出器が壊れるので使えない。気体検出器は、かける電圧だけで性格が変わる縦軸は集まる電荷の量(対数目盛)。α線とβ線の2本の線がどう動くかを見るⅠⅡⅢⅣⅤⅥ1001031061091012α線(電離が多い)β線(電離が少ない)2本が重なる=線種が区別できない印加電圧 →集まる電荷Ⅰ再結合領域イオンが電極に届く前にくっついて戻ってしまう使わないⅡ電離箱領域できたイオンをすべて集めきる(飽和)電離箱Ⅲ比例領域電子なだれで増幅。元の電離量に比例比例計数管Ⅳ制限比例領域比例関係がくずれ始める使わないⅤGM領域1個入れば必ず同じ大きさのパルスGM計数管Ⅵ連続放電領域放電が止まらず、検出器が壊れる使えない
横軸がかける電圧、縦軸が集まる電荷(対数目盛)。Ⅱの電離箱領域・Ⅲの比例領域・ⅤのGM領域の3つだけを使う。GM領域ではαとβの線が重なる=線種が区別できなくなる。

放射線が気体の中を通ると、イオン対ができます。1個のイオン対を作るのに必要な平均エネルギーを W値 といい、空気では約 33.97 eV(試験では 34 eV として計算させることが多い)です。

このイオン対を電極に集めるわけですが、かける電圧によって、集まり方がまったく変わります。

Ⅰ 再結合領域(使わない)

電圧が低すぎて、イオンが電極に届く前に再びくっついて中性に戻ってしまいます。集まる電荷が入射エネルギーを表さないので、測定には使えません。

Ⅱ 電離箱領域(電離箱)

できたイオン対を、ちょうど全部集めきる領域です。これ以上電圧を上げても集まる量が増えないので、飽和領域とも呼ばれます。

集まる電荷が入ったエネルギーにきれいに比例するので、線量の測定に最適です。そのかわり増幅がまったくないので、出力はごく小さく、高感度の電位計が必要になります。

Ⅲ 比例領域(比例計数管)

電圧をさらに上げると、陽極付近の電界が強くなり、電子が加速されて次々に新しい電離を起こします。これが電子なだれ(ガス増幅) です。

大事なのは、増幅されても元の電離量に比例したままだという点です。だから α線とβ線を弁別できます。ガス増幅率は 10³〜10⁵倍ほどです。

Ⅳ 制限比例領域(使わない)

比例関係がくずれ始める中途半端な領域で、測定には使いません。

Ⅴ GM領域(GM計数管)

さらに電圧を上げると、放射線が1個入っただけで、管全体に放電が広がります。結果として、何が入っても同じ大きさのパルスが出ます。

出力は非常に大きく(ガス増幅 10⁶倍以上。文献により 10⁸〜10¹⁰ とも書かれます)、増幅回路がほとんどいらないのが長所です。しかし波高が一定ということは、エネルギーの情報も線種の情報も失われているということです。図でαとβの線が重なるのは、そういう意味です。

Ⅵ 連続放電領域(使えない)

放電が止まらなくなり、検出器そのものが壊れます。

3つの気体検出器:どう使い分けるか

電離箱・比例計数管・GM計数管の比較3つの気体検出器を比べた図。構造はどれも円筒の中に気体を封じ、中心に陽極の線を張った形でよく似ており、違うのはかける電圧だけである。電離箱はガス増幅がなく1倍で、α線とβ線で出力パルスの高さが違うため区別できる。エネルギー依存性が小さく線量の測定に使う。比例計数管はガス増幅が1000倍から10万倍で、比例関係を保ったまま大きくなるのでα線とβ線を弁別でき、中性子の検出にも使う。GM計数管はガス増幅が100万倍から1億倍で出力が大きく回路が簡単だが、α線でもβ線でも同じ高さのパルスになるため線種もエネルギーも分からず、分解時間による数え落としもある。汚染検査など数を数える用途に使う。なおパネル間の実際の出力差は100万倍以上あり、図では見やすさのため高さを圧縮している。同じ放射線が入っても、出てくるパルスはこれだけ違う構造はどれもよく似ている。違うのはかける電圧だけ電離箱ガス増幅 なし(1倍)気体中心の陽極放射線パルスの高さαβα と β で高さが違う○ 入ったエネルギーに比例○ エネルギー依存性が小さい✗ 出力が小さく増幅が要る線量の測定に使う比例計数管ガス増幅 10³〜10⁵倍気体中心の陽極放射線パルスの高さαβ比例したまま大きくなる○ 比例関係がくずれない○ α と β を弁別できる✗ 電圧の安定が必要線種の弁別・中性子に使うGM計数管ガス増幅 10⁶倍以上気体中心の陽極放射線パルスの高さαβどちらも同じ高さになる○ 出力が大きく回路が簡単✗ 線種もエネルギーも不明✗ 分解時間で数え落とす汚染検査・数を数える用途電離箱と比例計数管は α と β で高さが違う(=区別できる)。GM計数管は何が入っても同じ高さになる※ パネル間の実際の差は10⁶倍以上。図は見やすさのために高さを圧縮している
構造はどれも「円筒に気体を入れ、中心に陽極の線を張った」形でよく似ている。電離箱と比例計数管はαとβで高さが違う(区別できる)が、GM計数管は何が入っても同じ高さになる。

電離箱

線量を正確に測るための検出器です。空気の実効原子番号が人体組織に近いため、エネルギー依存性が小さいのが最大の武器です。

形はいくつかあります。

  • 指頭形電離箱(ファーマ形) … 放射線治療の線量計測の標準。体積 0.6 cm³ 程度
  • 平行平板形電離箱 … 電子線や表面付近の測定に使う
  • 自由空気電離箱 … 照射線量の一次標準を決めるための大型装置

電離箱で押さえておきたい性質が2つあります。

空気等価壁と平衡厚 … 照射線量を測るには、壁で発生した二次電子が空洞の空気を電離する必要があります。壁が薄すぎると電子が足りず、厚すぎると光子そのものが減弱してしまいます。ちょうどよい厚さ(平衡厚)で収集電荷が最大になり、それ以上厚くすると減弱で減っていきます。

温度と気圧の影響 … 電離箱の空洞は外気とつながっているので、温度が高い/気圧が低いと空気の密度が下がり、電離量が減ります。これを補正するのが温度気圧補正係数です。

kTP=273.2+T273.2+22.0×101.3Pk_{TP} = \frac{273.2 + T}{273.2 + 22.0} \times \frac{101.3}{P}

比例計数管

ガス増幅を使いながら、比例関係を保っているのが持ち味です。

  • 封入ガスは PRガス(P-10ガス:アルゴン 90% + メタン 10%)が標準。メタンがクエンチング(消滅)ガスとして働きます
  • 印加電圧を変えながら計数率を測ると、α線だけを数えるプラトーと、α+βを数えるプラトーが現れるので、線種を弁別できます。これはGM計数管にはできない芸当です
  • BF₃ ガスや ³He を封入すると、熱中性子を検出できます。中性子そのものは電離しないので、10^{10}B(n,α)7^{7}Li のような反応で荷電粒子に変換する必要があるためです

GM計数管

とにかく数を数えるための検出器です。

  • 放電を止めるためにクエンチングガス(有機ガスやハロゲン)を混ぜます
  • 印加電圧を変えても計数率がほぼ変わらないプラトーがあり、その中央付近で使います
  • 波高弁別レベルを超えたパルスの数を数えるだけなので、エネルギーも線種も分かりません
  • エネルギー依存性が大きいので、線量率を正確に測るのには向きません

分解時間:立て続けに入った2個目は数えられない

分解時間と数え落としGM計数管の分解時間を3段で説明した図。上段は入射した放射線を矢印で示し、中段は赤い帯で反応できない不感時間を示し、下段は出力パルスを示している。パルスが出たあとには分解時間τの不感時間があり、赤い帯の上に入った放射線は出力に出てこない。これが数え落としである。真の計数率nは、測定した計数率mを1からmとτの積を引いた値で割って求め、数え落としの割合はmτである。分解時間が200マイクロ秒、測定した計数率が毎分15000カウントすなわち毎秒250カウントのとき、mτは0.05となり5パーセントを数え落としていることになる。カウント毎分のままτに掛けず、必ずカウント毎秒に直してから計算する。分解時間:立て続けに入った2個目は数えられないGM計数管は1回鳴ると、しばらく次の放射線に反応できない入射不感出力✗数え落とし✗数え落とし分解時間 τ時間 →赤い帯の上に入った放射線は、出力に出てこない真の計数率 n = m ÷ (1 − m τ)   数え落としの割合 = m τm = 測定した計数率 τ = 分解時間(GM計数管で 100〜300 μs 程度)例:τ = 200 μs、m = 15,000 cpm = 250 cps のときm τ = 250 × 200×10⁻⁶ = 0.05 → 5% を数え落としているcpm のまま τ に掛けないこと。必ず cps に直してから
1回パルスが出ると、しばらく次に反応できない時間(分解時間 τ)がある。その間に入った放射線はなかったことになる。計数率が高いほど数え落としが増える。

GM計数管は、1個の放射線で管全体が放電します。放電が収まって次の放射線に反応できるようになるまでには時間がかかり、これを分解時間 τ といいます。GM計数管では 100〜300 μs 程度で、ほかの検出器に比べてかなり長い部類です。

この間に入った放射線は数え落とされるので、測定値は真の値より少なくなります。補正の式はこうです。

n=m1−mτn = \frac{m}{1 - m\tau}

nn が真の計数率、mm が測定した計数率です。数え落としの割合は mτm\tau で求まります。

実際に計算してみます。分解時間 200 μs、測定した計数率 15,000 cpm のとき——まず単位をそろえます。15,000 cpm = 250 cps。

mτ=250×200×10−6=0.05m\tau = 250 \times 200 \times 10^{-6} = 0.05

つまり 5%を数え落としていることになります。

ここで大事なのは、単位をcpm(毎分)のままτと掛けないことです。τは秒で与えられるので、必ずcps(毎秒)に直してから掛けます。ここでの取り違えが、この手の計算問題でいちばん多い失点です。

サーベイメータの使い分け

現場でも試験でも、何を測りたいかで道具が決まります。

測りたいもの使う測定器理由
線量率(漏洩線量・遮へいの確認)電離箱式サーベイメータエネルギー依存性が小さく、線量率に正確
表面汚染(β線の有無)GM管式サーベイメータ感度が高く、汚染の存在を拾える
低線量率のγ線(環境測定・汚染検査)シンチレーション式サーベイメータ感度が非常に高い
中性子BF₃・³He 比例計数管、レムカウンタ荷電粒子に変換して検出する

覚え方はこうです。正確に測るなら電離箱、あるかないかを探すならGM、微弱なγ線ならシンチレーション。

まとめ

  • 放射線は直接見えないので、必ず別のものに変換してから測る
  • 検出器は3分類。気体の電離(電離箱・比例計数管・GM計数管)/発光(NaI・BGO・LSO)/固体や化学の変化(半導体・TLD・蛍光ガラス・OSL・フリッケ・フィルム)
  • フリッケ線量計は化学線量計、チェレンコフ検出器は光速を超える荷電粒子の光
  • W値=イオン対1個を作るのに必要な平均エネルギー。空気で約34 eV
  • 気体検出器はかける電圧だけで6領域に分かれ、使うのは Ⅱ電離箱領域・Ⅲ比例領域・ⅤGM領域の3つ
  • 電離箱=増幅なし。エネルギー依存性が小さく線量測定の標準。指頭形・平行平板形・自由空気電離箱
  • 温度が高い/気圧が低いと電離量は減る。補正が kTPk_{TP}
  • 比例計数管=ガス増幅 10³〜10⁵倍。比例関係を保つのでα線とβ線を弁別できる。PRガス、BF₃・³Heで熱中性子
  • 光電子増倍管は比例計数管には不要(シンチレーション検出器の部品)
  • GM計数管=ガス増幅 10⁶倍以上。何が入っても同じ高さのパルスなので、線種もエネルギーも分からない
  • 分解時間 τ は100〜300 μs。n=m/(1−mτ)n = m/(1-m\tau)、数え落としの割合は mτm\tau。cpmはcpsに直してから掛ける
  • サーベイメータは 線量率=電離箱式/表面汚染=GM管式/低線量率のγ線=シンチレーション式/中性子=比例計数管

次回は、シンチレーション検出器と半導体検出器を扱います。NaI(Tl)の潮解性、エネルギースペクトルに現れる光電ピーク・コンプトン端・エスケープピークの読み方、そして半導体がなぜエネルギー分解能に優れるのかを整理します。

過去問での問われ方は、過去問解説の記事一覧や国家試験まとめから確認できます。

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