MRIの安全管理①:磁場と磁性体(ミサイル効果・5ガウスライン)
MRI室は、強い磁場が常に発生している特殊な空間です。被ばくもなく便利な検査ですが、その分、ほかのモダリティにはない独特の安全管理が求められます。
この記事では、磁場まわりの安全管理(磁性体の吸着事故 と 5ガウスライン)を整理します。RFによる発熱(SAR)については、別記事「MRIの安全管理②:SARと発熱・熱傷」で扱います。
大前提:磁場は「いつも」出ている
MRIの超電導磁石は、電源を切っても磁場が消えません(超電導状態を保つため、常に磁場が発生し続けています)。「装置が止まっているから安全」ということはありません。MRI室に入る=常に強磁場の中にいると考えてください。
磁性体とミサイル効果
鉄などの 強磁性体 は、磁場に強く引き寄せられます。MRI室に持ち込むと、装置(ボア)に向かって勢いよく飛んでいく ミサイル効果(projectile effect) が起こります。点滴台・酸素ボンベ・はさみ・車椅子などが代表例で、重大事故につながります。
- 金属製品の持ち込みを徹底的にチェックする
- 患者・付添者・スタッフの所持品(鍵・ヘアピン・カイロ等)も確認する
- 磁性体かどうか分からない物は持ち込まない
5ガウスライン
磁場は装置から外側へ広がっています。その強さが 5ガウス(0.5 mT) になる境界線が 5ガウスライン です。
5ガウスラインの内側は、心臓ペースメーカなどの植込み機器に影響を与えうる領域とされ、立ち入りの管理が必要です。また、体内金属(動脈瘤クリップ、人工内耳など)がある患者は、条件付きMRI対応(MR Conditional)かどうかの確認が欠かせません。
クエンチにも注意
超電導磁石は液体ヘリウムで冷やされています。何らかの異常で冷却が失われると、ヘリウムが急激に気化する クエンチ が起こります。酸素濃度の低下につながるため、排気経路の確保と緊急時の対応を理解しておく必要があります。
騒音にも注意
撮像中の大きな騒音は、傾斜磁場コイルに電流を流したり止めたりする際、静磁場の中でコイルが振動して発生します(RFによる発熱=SARとは別の現象です)。耳栓やヘッドホンで聴覚を保護することも、磁場まわりの大切な安全管理です。
試験で問われやすいポイント
- 超電導磁石は電源を切っても磁場が消えないこと。
- 強磁性体のミサイル効果と持ち込み管理。
- 5ガウスラインの意味(磁場が5ガウスになる境界、植込み機器への影響)。
- クエンチによる酸素濃度低下のリスク。
- 撮像中の騒音は傾斜磁場コイルの振動が原因(聴覚保護が必要)。
まとめ
- MRIの磁場は常時発生。装置が止まっていても安全ではない。
- 磁性体の持ち込み厳禁(ミサイル効果)。5ガウスラインの内側は要注意。
- 体内金属は条件付きMRI対応かどうかを必ず確認する。
安全管理は知識だけでなく、現場での確認の徹底が何より大切です。各施設の手順・チェックリストに必ず従ってください。