本文へスキップ
放射線安全管理

医療被ばくの最適化と DRL(診断参考レベル)

DRL(Diagnostic Reference Level、診断参考レベル)は、国家試験の頻出テーマです。しかも、毎回ほぼ同じ論点が問われます。

いちばん多く問われるのは、DRL は線量限度ではないという一点です。名前に「レベル」とついているせいで上限値のように見えますが、まったく違う性格のものです。

この記事では、なぜ DRL が必要なのか、どう決められているのか、そして超えていたら何をするのかを順に見ていきます。防護の体系そのものは「放射線防護の体系」にあります。

なぜ DRL が必要なのか

DRLの位置づけDRLすなわち診断参考レベルの位置づけを示した図。医療被ばくには線量限度がない。患者本人が診断という直接の利益を受けるからであり、限度を設けると必要な検査ができなくなる。そこでDRLが用意された。目的は医療被ばくの最適化の推進であり、自施設の線量がほかと比べて極端に高くないかを点検する目安で、超えたら撮影条件を見直すきっかけにする。防護の3原則の中では、正当化は検査をするかどうかの判断、最適化はDRLを使う道具の段階、線量限度は医療被ばくには適用しない。DRLは線量限度のかわりではなく最適化のための道具であり、超えても違法ではなく、診断に必要ならDRLを超えることもありうる。個々の患者に当てはめるものではなく標準的な体格の集団で比較する。逆に極端に低い場合も注意が必要で、画質が診断に足りていない可能性がある。DRL:線量限度がない医療被ばくのための「点検の目安」目的は最適化の推進。限度ではないので、超えても違法ではない医療被ばくには線量限度がない患者本人が診断という直接の利益を受けるから限度を設けると必要な検査ができなくなるでは、野放しでよいのか?→そこで DRL(診断参考レベル)目的は 医療被ばくの最適化の推進自施設の線量が、ほかと比べて極端に高くないかを点検する目安超えたら撮影条件を見直すきっかけにする防護の3原則の中での位置づけ① 正当化検査をするかどうかの判断② 最適化← DRL はここで使う道具③ 線量限度医療被ばくには 適用しないDRL は「線量限度のかわり」ではなく「最適化のための道具」超えても違法ではない。診断に必要ならDRLを超えることもありうる個々の患者に当てはめるものではなく、標準的な体格の集団で比較する逆に極端に低い場合も注意。画質が診断に足りていない可能性がある
医療被ばくには線量限度がない。そのかわりに用意されたのが DRL で、目的は最適化の推進。

放射線防護の3原則(正当化 → 最適化 → 線量限度)のうち、医療被ばくには線量限度を適用しません。患者本人が診断という直接の利益を受けるからで、限度を設けてしまうと必要な検査ができなくなり、かえって患者の不利益になります。

では、医療被ばくは野放しでよいのか。そうではありません。最適化の段階で線量を点検するしくみが必要です。それが DRL です。

DRL の目的は、医療被ばくにおける防護の最適化の推進

使い方は単純で、自施設の線量を集計して DRL と比べるだけです。超えていれば原因を調べて撮影条件を見直します。

ここで押さえるべき性格が3つあります。

  • 線量限度ではないので、超えても違法ではありません。診断に必要なら DRL を超えることもありえます
  • 個々の患者に当てはめるものではありません。標準的な体格の患者の集団で比較します
  • 極端に低い場合も注意が必要です。画質が診断に足りていない可能性があります

DRL の決め方:75 パーセンタイル

DRLは75パーセンタイルDRLの決め方を示した図。全国の施設の線量を集めて、低いほうから75パーセントの値をDRLにする。横軸は施設ごとの線量で標準的な体格の患者について集計したもの、縦軸は施設の数である。75パーセンタイルの位置に線が引かれ、それより高い施設は見直しの対象になる。中央値すなわち50パーセンタイルはそれより左にある。DRL以下のときはひとまず問題ないが、極端に低い場合は画質が足りているか確認する。DRLを超えたときも違法ではないが、原因を調べて撮影条件を見直す。診断に必要なら超えることもありうる。設定は75パーセンタイルであって50パーセンタイルではない。数値を決めるのは各国で、日本ではJ-RIMEが実態調査をもとに取りまとめている。ICRPが示すのは考え方であって各国の具体的な数値ではない。装置や技術の進歩に合わせて定期的に改訂される。DRL の決め方:全国の実態調査の 75 パーセンタイル中央値ではない。そして数値を決めるのは ICRP ではなく各国全国の施設の線量を集めて、低いほうから 75% の値を DRL にする75 パーセンタイル= DRL中央値低い高い施設ごとの線量(標準的な体格の患者で集計)DRL 以下のときひとまず問題なしただし 極端に低い場合は画質が足りているか確認するDRL を超えたとき違法ではない原因を調べて撮影条件を見直す診断に必要なら超えることもありうる設定は 75 パーセンタイル。50 パーセンタイル(中央値)ではない数値を決めるのは各国。日本では J-RIME が実態調査をもとに取りまとめているICRP が示すのは考え方であって、各国の具体的な数値ではない装置や技術の進歩に合わせて定期的に改訂される(2015 → 2020 → 2025)
全国の実態調査の75 パーセンタイル。中央値(50 パーセンタイル)ではない。数値を決めるのは ICRP ではなく各国。

DRL の値は、全国の施設の線量を集めた実態調査から決まります。低いほうから数えて 75% の位置の値、つまり 75 パーセンタイルです。

この決め方には意味があります。75 パーセンタイルを超える施設は、全体の 25% にあたります。つまり「全国の中で線量が高いほうの 4 分の 1 に入っていますよ」という合図なのです。上限値ではなく、目立って高くないかを点検するための目安だと分かります。

ここも出題されます。

  • 50 パーセンタイル(中央値)ではありません
  • 数値を決めるのは ICRP ではありません。ICRP が示すのは考え方で、具体的な数値は各国が自国の実態調査に基づいて設定します。日本では J-RIME が取りまとめています
  • 一度決めたら終わりではありません。装置や技術の進歩に合わせて定期的に改訂されます(日本でも 2015 → 2020 → 2025 と更新されています)

モダリティごとの指標

モダリティ別のDRL指標モダリティごとのDRLに使われる指標を示した図。X線CTはCTDIvolとDLP。一般撮影は入射表面線量。マンモグラフィは平均乳腺線量。IVRや血管撮影は基準点の線量率や面積線量。核医学は投与放射能量で小児にも設定されている。歯科は入射表面線量などである。共通点はどれも装置から出た線量で、実際に測れて施設間で比べられる量であることである。実効線量や等価線量は防護量すなわち計算上の量なのでDRLには使わない。CTのDRLはCTDIvolとDLPの2つで、CTDIvolは1回転あたりの線量の濃さ、DLPは撮影範囲まで含めた検査1件の総量である。実効線量EDやSARはDRLの指標ではない。核医学にもDRLがあり、核医学検査には適用しないという記述は誤りである。DRL に使う指標:実際に測れる量だけ実効線量や等価線量のような「計算上の量」は使わないX線 CTCTDIvol(mGy)DLP(mGy・cm)一般撮影入射表面線量(mGy)マンモグラフィ平均乳腺線量(mGy)IVR・血管撮影基準点の線量率・面積線量核医学投与放射能量(MBq)小児にも設定されている歯科入射表面線量など共通点 ── どれも「装置から出た線量」で、実際に測れて施設間で比べられる量実効線量や等価線量は防護量(計算上の量)なので、DRL には使わないCT の DRL は CTDIvol と DLP の2つCTDIvol は 1 回転あたりの線量の濃さ、DLP は撮影範囲まで含めた検査1件の総量ED(実効線量)・SAR は DRL の指標ではない。選択肢に紛れ込む核医学にも DRL がある。「核医学検査には適用しない」は誤り
どれも実際に測れて、施設間で比べられる量。実効線量や等価線量は使わない。

DRL には、モダリティごとに決まった指標が使われます。

モダリティ指標
X線 CTCTDIvol(mGy)・DLP(mGy·cm)
一般撮影入射表面線量(mGy)
マンモグラフィ平均乳腺線量(mGy)
IVR・血管撮影基準点の線量率・面積線量
核医学投与放射能量(MBq)
歯科入射表面線量など

共通しているのは、どれも「装置から出た線量」で、実際に測れて施設間で比べられる量だということです。

逆に、実効線量や等価線量は DRL には使いません。これらは防護量、つまり計算で求める量なので、施設間の比較には向かないからです。

CT については CTDIvol と DLP の2つであることがそのまま問われます。

  • CTDIvol … 1 回転あたりの線量の濃さ
  • DLP … 撮影範囲まで含めた検査1件の総量

DRL を超えていたら何をするか

DRLを超えたときの対応と誤解DRLを超えたときの検査条件の見直しと、DRLについてのよくある誤りを示した図。線量を下げる正しい方向は、自動露出機構の目標SDを上げてノイズを許容すること、撮影範囲を必要最小限にすること、逐次近似再構成を使うこと、管電流を下げることである。線量が増える誤った方向は、管電流を上げること、撮影範囲を拡大すること、空間分解能の高い再構成関数にすること、逐次近似法からFBP法に戻すことである。よくある誤りとして、線量限度の値であるというのは誤りで最適化のための目安である。超えて被ばくさせてはならないというのは誤りで診断に必要なら超えることもありうる。ICRPが数値を設定するというのは誤りで考え方はICRPだが数値は各国が決め日本ではJ-RIMEである。小児には定められていないというのは誤りで小児にも定められている。一度設定すれば改訂は不要というのは誤りで定期的に改訂する。50パーセンタイルで設定するというのは誤りで75パーセンタイルである。DRL を超えたら:線量を下げる方向の見直しを探す「目標 SD を上げる = 線量を減らす」の向きに注意線量を下げる方向(正しい)✓自動露出機構の目標 SD を上げるノイズを許容する → 線量が減る✓撮影範囲を必要最小限にするDLP が下がる✓逐次近似再構成を使うノイズを減らせるので低線量化できる✓管電流を下げるいちばん直接的線量が増える方向(誤り)✗管電流を上げる線量が増える✗撮影範囲を拡大するDLP が増える✗空間分解能の高い再構成関数にするノイズも強調され、かえって線量が要る✗逐次近似法から FBP 法に戻す向きが逆DRL についての「よくある誤り」まとめ✗線量限度の値である→最適化のための目安であって限度ではない✗超えて被ばくさせてはならない→診断に必要なら超えることもありうる✗ICRP が数値を設定する→考え方は ICRP。数値は各国(日本は J-RIME)✗小児には定められていない→小児にも定められている✗一度設定すれば改訂は不要→装置の進歩に合わせて定期的に改訂する✗50 パーセンタイルで設定する→75 パーセンタイルで設定するDRL を超えたら「線量を下げる方向」の見直しを探す目標 SD を上げる = ノイズを許容する = 線量を減らせる。向きを取り違えやすい逐次近似再構成は低線量化の手段。FBP に戻すのは逆方向
探すのは線量を下げる方向の見直し。目標 SD を上げる = ノイズを許容する = 線量を減らせる。

DRL を超えていたら、線量を下げる方向の見直しを探します。

正しい方向

  • 自動露出機構の目標 SD を上げる … 目標 SD は「どこまでのノイズを許すか」の設定値です。上げる = ノイズを許容する = 線量を減らせる
  • 撮影範囲を必要最小限にする … DLP が下がります
  • 逐次近似再構成を使う … ノイズを減らせるので低線量化に使えます
  • 管電流を下げる … いちばん直接的です

誤った方向(線量が増える)

  • 管電流を上げる
  • 撮影範囲を拡大する
  • 空間分解能の高い再構成関数に変更する … シャープな関数はノイズも強調するので、同じ画質を保つにはむしろ線量が要ります
  • 逐次近似法から FBP 法に戻す … 向きが逆です

とくに 目標 SD の向きは取り違えやすいところです。「SD を上げる」は「ノイズを増やしてよい」という意味なので、線量は減らせます。

DRL についての「よくある誤り」

出題のほとんどは、次の6つのどれかです。

よくある誤り正しくは
線量限度の値である最適化のための目安であって限度ではない
超えて被ばくさせてはならない診断に必要なら超えることもありうる
ICRP が数値を設定する考え方は ICRP。数値は各国(日本は J-RIME)
小児には定められていない小児にも定められている
一度設定すれば改訂は不要定期的に改訂する
50 パーセンタイルで設定する75 パーセンタイルで設定する

さらに2つ、覚えておくと得です。

  • 核医学にも DRL がある(投与放射能量)
  • 放射線治療の総線量は DRL ではない。DRL は診断・IVR の線量指標です

試験で問われやすいポイント

論点覚える形
DRL の目的医療被ばくの最適化の推進
防護の3原則での位置最適化の段階で使う道具
医療被ばくの線量限度ない(だから DRL がある)
超えたら違法ではない。条件を見直すきっかけ
設定値75 パーセンタイル
数値を決めるのは各国(日本は J-RIME)。ICRP は考え方
改訂定期的に行う
小児定められている
核医学適用される(投与放射能量)
放射線治療対象外
CT の指標CTDIvol・DLP
一般撮影の指標入射表面線量
使わない量実効線量・等価線量(防護量だから)
超えたときの見直し目標 SD を上げる・範囲を絞る・逐次近似
極端に低いとき画質が足りているか確認する

まとめ

  • 医療被ばくには線量限度がない。そのかわりに用意されたのが DRL
  • DRL の目的は最適化の推進。線量限度ではないので、超えても違法ではない
  • 設定値は全国の実態調査の 75 パーセンタイル。中央値ではない
  • 数値を決めるのは各国(日本は J-RIME)。ICRP が示すのは考え方
  • 指標は実際に測れる量。CT は CTDIvol と DLP。実効線量は使わない
  • 小児にも核医学にも DRL がある。放射線治療の総線量は対象外
  • 超えていたら線量を下げる方向の見直しを探す。目標 SD を上げるのは線量を減らす操作
  • 極端に低い場合も注意。画質が診断に足りていない可能性がある

この分野のほかの記事

← トップに戻る | 放射線安全管理の記事一覧