防護の考え方(「放射線防護の体系」)が分かったら、次は実際に線量を減らす方法と、自分がどれだけ浴びたかを評価する方法です。
この分野は計算問題が出ます。しかも出題の型は決まっていて、距離の逆二乗則を使った線量計算と、防護衣を着たときの不均等被ばくの実効線量評価の2つがほとんどです。どちらも手順を固定してしまえば確実に取れます。
外部被ばくの防護:時間・距離・遮蔽
外部被ばくの防護は3つだけ。距離は2乗で効くので、離れられるときは離れるのがいちばん効率がよい。
外部被ばくは、体の外にある線源から放射線を浴びることです。防ぐ方法は3つしかありません。
- 時間 … 短くする。線量は時間に比例するので、半分の時間なら半分の線量
- 距離 … 離れる。線量は距離の2乗に反比例するので、2 倍離れれば 4 分の 1
- 遮蔽 … さえぎる。厚さとともに指数関数的に減り、半価層ごとに半分になる
いちばん効果が大きいのは距離です。2乗で効くので、少し下がるだけで大きく減ります。
IVR の術者の被ばくを考えると分かりやすくなります。術者が浴びているのは患者から出る散乱線なので、
- 拡大透視 … 患者の入射線量が大幅に増える → 散乱線も増える → 逆効果
- パルスレートを高くする … 照射回数が増える → 逆効果。下げるのが低減策
- 患者に近づく … 距離の逆二乗則で被ばくが増える → 離れられるときは離れる
- オーバーテーブルチューブ方式 … X線の入射側が上になり、強い散乱線が術者の上半身(目・甲状腺)を直撃する → アンダーテーブル方式にする
距離の逆二乗則を使った計算
計算に使う式はこれだけです。
H˙=d2Γ×A
H˙ が線量率(1時間あたりの線量)、Γ が実効線量率定数、A が放射能、d が距離です。
実際の問題では、この式を「線量率 → 1回分 → 年間」の3段階で使います。例として、¹⁸F を 200 MBq 投与した直後の患者から 2 m の距離で 5 分間、年間 50 回対応した場合を計算してみます(Γ=0.14 µSv·m²·MBq⁻¹·h⁻¹)。問題文のどの数字が式のどこに入るかを、まず図で確認してください。
手順は 線量率 → 1回分 → 年間 の3段階。失点は分を時間に直し忘れるか距離を2乗し忘れるかのどちらか。
① 2 m での線量率
H˙=220.14×200=428=7 μSv/h
② 5 分間の線量
定数の単位が「毎時」なので、5 分を時間に直します。
7×605=0.583 μSv
③ 年間 50 回ぶん
0.583×50=29.2≒30 μSv
けた違いの誤答には、決まった原因が2つあります。
- 分を時間に直し忘れる → 350 µSv。定数の単位が「毎時」であることを毎回確認する
- 距離を2乗せずに割る → 約 60 µSv。ちょうど2倍になるので、選択肢に必ず用意されています
内部被ばくの防護:3D2C
「時間」は 3D2C に含まれない。あれは外部被ばく(時間・距離・遮蔽)の1つ。
内部被ばくは、放射性物質を体内に取り込んでしまうことによる被ばくです。外から身を守るのではなく、放射性物質そのものを管理するという発想になります。その原則が 3D2C で、頭文字が D の3つと C の2つ、合わせて5つです。
| 記号 | 原則 | 内容 |
|---|
| D | 希釈(Dilute) | 濃度限度以下になるまで薄めて扱う |
| D | 分散(Disperse) | 一箇所に溜めず広げて濃度を下げる |
| D | 除染(Decontaminate) | 付着・残留した汚染を取り除く |
| C | 集中化・濃縮(Concentrate) | 少量にまとめ、管理しやすい形にする |
| C | 閉じ込め(Contain) | 容器やフードで封じ込め、外に出さない |
「薄めて散らす(希釈・分散)」と「集めて閉じ込める(集中化・閉じ込め)」は、方針としては正反対です。扱う核種の量や性質に応じて使い分けます。そこに「除染」が加わって 3D2C になります。
出題の形は決まっていて、「含まれないのはどれか」と聞かれます。答えはたいてい 時間で、これは外部被ばくの防護の原則です。
不均等被ばくの実効線量評価
係数の合計は 1.00。防護衣で守られた胴体は低く、守られていない頭頸部は高い。それを全身に直すための式。
防護衣を着て作業すると、襟の外(頭頸部)と防護衣の内側で、被ばくがまったく違います。この不均等な被ばくを全身の平均に直すための式が用意されています。
E=0.08Ha+0.44Hb+0.45Hc+0.03Hm
記号の意味は次のとおりです。
| 記号 | 部位 | 係数 |
|---|
| Ha | 頭頸部 | 0.08 |
| Hb | 胸部・上腕部 | 0.44 |
| Hc | 腹部・大腿部 | 0.45 |
| Hm | Ha,Hb,Hc のうち最大の値 | 0.03 |
係数の合計は 0.08 + 0.44 + 0.45 + 0.03 = 1.00 です。全身をもれなく重み付けしている証拠で、この検算を覚えておくと式の記憶違いに気づけます。
ここで鍵になるのが、線量計を何個着けているかです。
- 男性 … 襟の外と防護衣の内側の 2 個が基本。腹部は測っていないので、Hc=Hb と置きます(防護衣の中は胸も腹も同じように守られているため)
- 女性 … 腹部にも着けて 3 個。Hc を実測できるので、式の形が変わります
そして Hm は最大値なので、防護衣に守られていない頭頸部の Ha になることがほとんどです。
計算のしかた
やることは同じ。記号を実測値に振り分けてから代入するだけ。Hm の項を落とさない。
例1:数値を入れて計算する
頭頸部 5 mSv、腹部 1 mSv(線量計 2 個)のとき。
| 記号 | 値 |
|---|
| Ha(頭頸部) | 5(実測) |
| Hb(胸部) | 1(防護衣の内側なので腹部の値を当てる) |
| Hc(腹部) | 1(実測) |
| Hm(最大値) | 5 |
E=0.08×5+0.44×1+0.45×1+0.03×5
=0.40+0.44+0.45+0.15=1.44 mSv
例2:式の形を答える
男性が頸部と防護衣の内側に 1 個ずつ着けたとき。記号を振り分けると、
- Ha … 頸部の線量計がそのまま Ha
- Hb … 防護衣の内側(胸部)の線量計
- Hc … 測っていない → Hc=Hb と置く
- Hm … 最大は襟の外 → Hm=Ha
代入して整理すると、
E=0.08Ha+0.44Hb+0.45Hb+0.03Ha=0.11Ha+0.89Hb
係数の和は 0.11 + 0.89 = 1.00 で、ここでも検算が効きます。
誤答の形も決まっています。
- Hm の項を落とす → 答えが小さくなる。忘れやすいので最後に必ず確認する
- 頭頸部の実測値をそのまま実効線量にする → 例1なら 5 mSv。防護衣の効果をまったく考えていない誤答
水晶体の防護
水晶体の等価線量限度が引き下げられた(「RI規制法と電離放射線障害防止規則」参照)ことで、頭頸部の被ばく管理が実務上いっそう重要になりました。
- 防護衣を着るなら、不均等被ばくとして管理する。襟の外にも線量計を着けて、頭頸部の線量を実測します
- 防護めがね・天吊り防護板を正しく使う。これがいちばん効果的です
- 患者に近づきすぎない、拡大透視を避ける、パルスレートを下げる
試験で問われやすいポイント
| 論点 | 覚える形 |
|---|
| 外部被ばくの防護 | 時間・距離・遮蔽 |
| いちばん効くのは | 距離(2乗で効く) |
| 線量率の式 | Γ×A÷d2 |
| 計算の手順 | 線量率 → 1回分 → 年間 |
| 失点の原因① | 分を時間に直し忘れる |
| 失点の原因② | 距離を2乗せずに割る(ちょうど2倍) |
| 内部被ばくの防護 | 3D2C(希釈・分散・除染・集中化・閉じ込め) |
| 3D2C に含まれないもの | 時間(外部被ばくの原則) |
| 不均等被ばくの式 | 0.08Ha+0.44Hb+0.45Hc+0.03Hm |
| 係数の合計 | 1.00 |
| Hm | 3つのうち最大。ふつうは Ha |
| 男性・線量計2個 | Hc=Hb と置く → 0.11Ha+0.89Hb |
| IVR の被ばく低減 | アンダーテーブル・パルスレートを下げる・離れる |
まとめ
- 外部被ばくの防護は時間・距離・遮蔽。距離が2乗で効くので最も効率がよい
- 線量計算は線量率 → 1回分 → 年間の3段階。分の換算と距離の2乗を必ず確認する
- 内部被ばくの防護は 3D2C。「時間」は含まれない
- 不均等被ばくの式は 0.08Ha+0.44Hb+0.45Hc+0.03Hm。係数の合計は 1.00
- 男性は線量計2個で Hc=Hb。整理すると 0.11Ha+0.89Hb
- Hm の項を落とさない。頭頸部の実測値をそのまま実効線量にするのも誤り
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