前の記事「診療放射線技師法と医療法」では、患者と資格を扱う法律を見ました。ここでは、放射線そのものと働く人を扱う2つを見ていきます。
- RI規制法(放射性同位元素等規制法)… 放射線障害の防止
- 電離放射線障害防止規則(電離則)… 働く人の健康。労働安全衛生法にもとづく規則
この2つには共通点があります。どちらも「1 MeV 以上」の放射線を対象にしていることと、どちらも従事者の健康診断を定めていることです。ここを押さえると、法令の仕分け問題がほぼ落ちなくなります。
RI規制法は何を規制しているか
RI規制法の放射線は電子線・X線とも 1 MeV 以上。だから診断用X線装置は医療法の担当になる。
RI規制法が規制するのは2つです。
- 放射性同位元素(密封・非密封の両方)
- 放射線発生装置(サイクロトロン・直線加速器・シンクロトロン・ベータトロンなど)
そして、この法律でいう「放射線」には線引きがあります。
電子線・X線は、1 MeV 以上のもの
1 MeV 未満は含まれません。診断用のX線装置がこの法律ではなく医療法で規制されるのは、まさにこの線引きのためです。電離則の定義も同じ 1 MeV 以上です。
施設は使用施設・貯蔵施設・廃棄施設の3つに分かれ、それぞれに構造設備の基準が定められています。
手続きの期限も問われます。放射線障害予防規程を変更したときは、変更の日から 30 日以内に原子力規制委員会へ届け出ます。技師法の「返納は 5 日」と混同しないようにしてください。
もうひとつ、特定放射性同位元素という区分があります。
その放射線が発散された場合に、人の健康に重大な影響を及ぼすおそれがあるもの
盗取やテロによる悪用を防ぐため、防護措置が特別に義務づけられているのが特徴です。
汚染状況の測定場所
汚染の測定場所は非密封RIが実際に触れる場所と区域の境界。廃棄物貯蔵施設・廃棄物詰替施設は含まれない。
RI規制法では、「線量の測定場所」と「汚染状況の測定場所」が別々に定められています。混ざりやすいので、汚染のほうを先に固めてしまいましょう。
汚染状況を測定する場所
- 作業室
- 廃棄作業室
- 汚染検査室
- 排気設備の排気口
- 排水設備の排水口
- 管理区域の境界
- 事業所等内の人が居住する区域
- 事業所等の境界
並べてみると、非密封のRIが実際に空気や表面に触れる場所と、区域の境界に集中していることが分かります。この理屈で覚えれば、一覧を丸暗記しなくても判断できます。
逆に、廃棄物貯蔵施設・廃棄物詰替施設は、汚染状況の測定場所には含まれません。廃棄物を密封したまま置いておくだけの施設だからです。
測定の頻度は1 か月を超えない期間ごとで、記録して保存します。
電離則の線量限度
つまずくのは単位が「年」か「3月」かと、誰に適用されるか。皮膚は 500 mSv/年。
電離則の線量限度は、次のとおりです。
| 対象 | 限度 |
|---|
| 実効線量(放射線業務従事者) | 100 mSv/5 年 かつ 50 mSv/年 |
| 眼の水晶体の等価線量 | 100 mSv/5 年 かつ 50 mSv/年 |
| 皮膚の等価線量 | 500 mSv/年 |
| 妊娠可能な女性の実効線量 | 5 mSv/3 月 |
| 妊娠中の女性:腹部表面の等価線量 | 2 mSv(妊娠が分かってから出産まで) |
| 妊娠中の女性:内部被ばくの実効線量 | 1 mSv(同じ期間) |
出題で狙われるのは、単位のすり替えと対象者のすり替えです。
- 皮膚は 500 mSv/年。これを「500 mSv/月」に置き換えた選択肢が出ます
- 妊娠可能な女性の 5 mSv/3 月は、通常の実効線量限度とは別に上乗せで適用されます。気づかないうちの妊娠初期に胎児が被ばくすることを防ぐための規定です
- 妊娠中の女性の腹部表面 2 mSv は「3 月あたり」ではなく、妊娠期間全体を通した値です
算定・記録・保存の期間も問われます。3 か月ごと・1 年ごとが基本で、実効線量と水晶体の等価線量には5 年ごとも加わります。
水晶体の等価線量限度は令和3年に改正された
150 mSv/年 から 100 mSv/5年 かつ 50 mSv/年 へ。算定・記録・保存に「5 年ごと」が追加された。
この改正は、放射線安全管理でいちばん新しい大きな変更なので、繰り返し出題されています。
改正前(令和3年3月まで)
- 150 mSv/年 という1つの数値だけ
- 算定・記録・保存は 3 か月ごとと 1 年ごと
改正後(令和3年4月から)
- 100 mSv/5 年 かつ 50 mSv/年
- 算定・記録・保存に 5 年ごと が追加された
引き下げの理由は、白内障が、これまで考えられていたより低い線量で起こると分かったためです。IVR や核医学など、術者の頭頸部が高く被ばくする場面で影響の大きい改正でした。
形としては、実効線量とまったく同じ(5 年で 100 mSv かつ 1 年で 50 mSv)になったのがポイントです。
健康診断と教育訓練
どちらも「従事者を守る」規定。だから定めているのは電離則と RI規制法で、医療法や技師法にはない。
健康診断(電離則・RI規制法)
- 雇入れのとき
- 放射線業務に配置替えするとき
- その後は 6 か月以内ごとに 1 回
教育訓練(RI規制法)
- 初めて管理区域に立ち入る前
- その後は 1 年を超えない期間ごと
- 記録して保存する
大事なのは、健康診断を定めているのが電離則と RI規制法の2つだけだということです。医療法・診療放射線技師法・医薬品医療機器等法には、健康診断の規定はありません。
理由もはっきりしています。健康診断は働く人を守るための規定だからです。医療法が守るのは患者と医療の安全、技師法が定めるのは資格と業務範囲、医薬品医療機器等法が規制するのは作る側・売る側。どれも従事者の健康を扱う法律ではありません。
試験で問われやすいポイント
| 論点 | 覚える形 |
|---|
| RI規制法の放射線 | 電子線・X線とも 1 MeV 以上(未満は含まない) |
| 放射線発生装置 | サイクロトロン・直線加速器・シンクロトロン・ベータトロン |
| 施設の区分 | 使用施設・貯蔵施設・廃棄施設 |
| 予防規程の変更届 | 30 日以内・原子力規制委員会あて |
| 特定放射性同位元素 | 健康に重大な影響のおそれ → 防護措置 |
| 汚染の測定場所 | 非密封RIが触れる場所 + 区域の境界 |
| 汚染の測定場所でないもの | 廃棄物貯蔵施設・廃棄物詰替施設 |
| 測定の頻度 | 1 か月を超えない期間ごと |
| 実効線量の限度 | 100 mSv/5 年 かつ 50 mSv/年 |
| 水晶体(現行) | 100 mSv/5 年 かつ 50 mSv/年 |
| 水晶体(改正前) | 150 mSv/年(いまは誤り) |
| 皮膚 | 500 mSv/年 |
| 妊娠可能な女性 | 5 mSv/3 月 |
| 妊娠中:腹部表面 | 2 mSv(妊娠期間全体) |
| 健康診断 | 雇入れ・配置替え・6 か月以内ごと |
| 健康診断を定める法令 | 電離則・RI規制法 |
| 教育訓練 | 立ち入る前・1 年を超えない期間ごと |
まとめ
- RI規制法・電離則の「放射線」は1 MeV 以上。診断用X線が医療法の担当になるのはこのため
- 施設は使用・貯蔵・廃棄の3つ。予防規程の変更届は 30 日以内
- 汚染の測定場所は非密封RIが触れる場所と区域の境界。「貯蔵」「詰替」の施設は入らない
- 電離則の線量限度は単位と対象者で引っかけられる。皮膚は 500 mSv/年
- 妊娠可能な女性は 5 mSv/3 月(上乗せ)、妊娠中の腹部表面は 2 mSv(妊娠期間全体)
- 水晶体は令和3年に 150 mSv/年 → 100 mSv/5年 かつ 50 mSv/年 へ。「5 年ごと」の算定が追加された
- 健康診断を定めるのは電離則と RI規制法。どちらも「従事者を守る」法律だから
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