MRスペクトロスコピー(MRS)の基礎
MRS(MR Spectroscopy:MRスペクトロスコピー) は、画像を作る代わりに、ある領域に含まれる 代謝物の量 を スペクトル(グラフ) として測る検査です。組織の「化学的な中身」を見られるのが特徴です。
スペクトルの見方
横軸は 化学シフト(ppm)、縦軸は代謝物の 量(ピークの高さ・面積)です。横軸は慣習的に右にいくほど ppm が小さくなります。代謝物ごとに決まった位置にピークが立ちます。
化学シフトの基準(0 ppm)
化学シフト(ppm)の「0 ppm」は、慣習的に TMS(テトラメチルシラン) という物質を基準に定められています。TMSは単一の鋭いピークを示し、ほかの物質よりも端(高磁場側)に出るため、基準として扱いやすい物質です。
ただし、体内のMRS(in-vivo)では TMSを実際に体へ入れることはできません。そのため臨床では、水(約4.7 ppm)やNAA(2.0 ppm)など既知のピークを目印にしてppmの位置を合わせます。量を比べるときは、比較的安定した Cr(クレアチン)を内部基準にして Cho/Cr比 などで評価します。
主要なピーク
代表的な代謝物と、その意味です。【要確認:ppm値・臨床的意義】
- NAA(2.0 ppm):神経細胞の指標。低下すると神経の障害や腫瘍などを示唆。
- Cr(クレアチン、3.0 ppm):比較的安定しているため、比較の基準に使われる。
- Cho(コリン、3.2 ppm):細胞膜の代謝を反映。腫瘍や脱髄などで上昇。
- 乳酸(Lac、1.3 ppm):嫌気性代謝・壊死・虚血で出現。ダブレット(2本に割れる)が特徴。
- 脂質(Lipid):壊死などで現れることがある。
読み方の例
腫瘍では、Choが上昇しNAAが低下する傾向があり、Cho/NAA比などが評価に使われます。壊死や虚血では乳酸が現れます。代謝疾患の評価にも用いられます。
試験で問われやすいポイント
- MRSは代謝物の量をスペクトルで見る(画像ではない)。横軸は化学シフト(ppm)。
- 化学シフトの基準(0 ppm)は TMS(テトラメチルシラン)。in-vivoでは水やNAAを目印にする。
- NAA=神経の指標(低下で異常)/Cho=腫瘍などで上昇/Cr=基準/乳酸=1.3 ppmのダブレット。
- 腫瘍では Cho上昇・NAA低下 が典型。
まとめ
- MRSは組織の代謝物の量を測る検査。ピークの位置(ppm)で物質がわかる。
- 主要ピークは NAA・Cr・Cho・乳酸。
- Cho上昇・NAA低下は腫瘍を示唆するなど、画像と組み合わせて評価する。