MRIの基本物理:歳差運動・ラーモア周波数・共鳴
MRIの信号は、体内の水素原子核(プロトン)の動きから生まれます。その出発点となるのが 歳差運動・ラーモア周波数・共鳴 です。ここを押さえると、緩和や撮像法の話がぐっと分かりやすくなります。
スピンと磁気モーメント
水素原子核(プロトン)は、自転(スピン)に伴って小さな磁石のようにふるまいます(磁気モーメント)。強い静磁場B₀の中に置くと、磁気モーメントは静磁場B₀の向きにそろおうとします。
歳差運動とラーモア周波数
静磁場B₀の中で、プロトンの磁気モーメントは静磁場B₀の軸のまわりをコマのように回ります。これが 歳差運動(precession) です。その回る速さ(周波数)が ラーモア周波数 で、次の式で表されます。
ここで は核に固有の定数(磁気回転比)です。ラーモア周波数は静磁場B₀に比例します。
- 水素(¹H)では なので、1.5Tで約64 MHz、3Tで約128 MHzになります。【要確認:定数・数値】
つまり、高磁場ほどラーモア周波数は高くなります。
共鳴:RFパルスで磁化を倒す
ここがMRIの核心です。プロトンと同じラーモア周波数のRF(電波)を当てると、エネルギーが効率よく渡され、磁化が倒れます。これが 共鳴(resonance) です。周波数がずれていると、ほとんど倒れません。
「共鳴」と「励起」の違い
混同しやすいので整理します。
- 共鳴は、周波数が合っている「条件・しくみ」。RFの周波数がプロトンのラーモア周波数と一致して、エネルギーが効率よく渡る状態を指します。
- 励起は、*その共鳴を使って、RFパルスで実際に磁化を倒す「操作・結果」*です。
共鳴という条件が成り立つからこそ、励起ができます(周波数が合っていないと、いくらRFを当てても励起は起こりません)。
- RFパルスを当てる → 縦向きの磁化が横に倒れる(横磁化が生まれる)。
- RFを止める → 倒れた磁化が元に戻る(これが緩和。別記事「T1・T2・プロトン密度」へ)。
- 横磁化が回転して、受信コイルに電圧(信号)を生む。
このため、ラーモア周波数を狙ってRFを当てることが、信号を得る前提になります。脂肪抑制(CHESS)が「脂肪の周波数だけを狙う」のも、この共鳴の応用です。
試験で問われやすいポイント
- 磁気モーメントは静磁場B₀の軸まわりを回る(歳差運動)。
- ラーモア周波数 。静磁場B₀に比例(高磁場ほど高い)。
- 共鳴:ラーモア周波数のRFを当てると磁化が倒れる。
- 水素のラーモア周波数は 1.5Tで約64 MHz、3Tで約128 MHz。【要確認】
まとめ
- プロトンは静磁場B₀の中で 歳差運動 し、その速さが ラーモア周波数(静磁場B₀に比例)。
- 共鳴:同じ周波数のRFを当てると磁化が倒れ、信号のもとになる。
- この基本が、緩和・コントラスト・脂肪抑制などすべての土台になる。