脊椎の解剖(頸椎・胸椎・腰椎)と画像での見え方
脊椎は、国家試験で毎回のように出題される部位です。しかも「解剖を答えさせる問題」だけでなく、頸椎斜位撮影や椎体骨折のように撮影技術・臨床と地続きで問われます。
この記事では、椎骨の基本構造から始めて、部位ごとの特徴と、それが画像でどう見えるかまでをつなげて整理します。「なぜその形なのか」から入ると、丸暗記せずに答えを導けるようになります。
脊柱の全体像
脊柱は 頸椎7・胸椎12・腰椎5・仙骨(5個が癒合)・尾骨(3〜5個が癒合) で構成されます。数は「7・12・5」と唱えて覚えるのが定番です。
横から見ると、まっすぐではなく S字状に弯曲しています。
- 頸椎:前弯(前に凸)
- 胸椎:後弯(後ろに凸)
- 腰椎:前弯(前に凸)
- 仙骨:後弯
この弯曲は、バネのように衝撃を吸収するためのものです。胸椎の後弯だけは胎児のときからある一次弯曲で、頸椎・腰椎の前弯は、首がすわり、立って歩くようになってから作られる二次弯曲です。
椎体が下へ行くほど大きくなるのも理にかなっています。上に乗っている体の重さが増えるからです。
椎骨の基本構造
どの椎骨も、前の「椎体」と後ろの「椎弓」、という2つの部分でできています。この2つが囲む穴が 椎孔 で、ここを脊髄が通ります。
- 椎体:円柱状の太い部分。体重を支えるのが役目
- 椎弓根:椎体の後ろから左右に伸びる、短く太い骨の柱。椎体と椎弓をつなぐ
- 椎弓板:椎弓根から後方へ伸びて、後ろで合流する板
- 棘突起:後方正中へ突き出る突起。背中で触れるのはこれ
- 横突起:左右へ突き出る突起
- 上関節突起・下関節突起:上下の椎骨と関節を作る
部位ごとの特徴
頸椎(C1〜C7)
頸椎の最大の特徴は、横突孔があることです。脊椎の中で横突孔を持つのは頸椎だけで、ここを椎骨動脈が通ります(第6頸椎から第1頸椎まで)。左右の椎骨動脈は合流して脳底動脈になり、後方循環を作ります。
骨のトンネルの中を動脈が通るという、ほかに例のない構造です。そのため頸椎の変形や外傷で椎骨動脈が傷つくことがあります。
もうひとつ頸椎特有なのが Luschka(ルシュカ)関節(鉤椎関節)です。椎体の後外側の上縁が立ち上がって、上の椎体と作る小さな関節で、頸椎にしかありません。加齢でここに骨棘ができると、すぐ外側にある椎間孔を狭くして神経根を圧迫します。
第1・第2頸椎は特殊な形をしています。
| 椎骨 | 別名 | 特徴 |
|---|---|---|
| C1 | 環椎 | 椎体がなくリング状。頭蓋骨を乗せる |
| C2 | 軸椎 | 歯突起が上へ突き出て、環椎の回転軸になる |
| C7 | 隆椎 | 棘突起が長く、首の付け根で最も突出して触れる |
胸椎(Th1〜Th12)
胸椎は肋骨と関節を作るのが特徴です。椎体の側面に肋骨窩、横突起に横突肋骨窩があります。
肋骨と胸骨に囲まれて固定されているため、動きが少ない部位です。この「動かない」という性質が、後述する胸腰椎移行部の骨折につながります。
腰椎(L1〜L5)
腰椎は椎体が最も大きく、体重を支えます。横突孔も肋骨窩もありません。
斜位像で見ると、椎弓・関節突起・横突起の重なりがスコッチテリア(犬)の形に見えます。これは有名な読影の目印です。
- 犬の目=椎弓根
- 犬の耳=上関節突起
- 犬の前足=下関節突起
- 犬の首(首輪)=関節突起間部
「犬の首に首輪が見える」=関節突起間部の骨折で、これが脊椎分離症です。斜位像を撮る意味がここにあります。
胸腰椎移行部が骨折しやすい理由
骨粗鬆症による椎体骨折は、胸腰椎移行部(Th11〜L1)に最も多く発生します。理由は構造で説明できます。
- 胸椎:肋骨と胸郭に支えられて動きが少ない
- 腰椎:支えるものがなくよく動く
この2つの境目に、動きの差による力が集中します。硬いものと柔らかいものの継ぎ目が壊れやすいのと同じ理屈です。
画像での見え方
同じ脊椎でも、どの方向から撮るかで見える構造が変わります。何を見たいかで撮影法が決まる、という関係を押さえておくと、撮影技術の問題にもそのまま使えます。
| 撮影方向 | よく見える構造 |
|---|---|
| 正面(AP) | 椎体、椎弓根(左右に並ぶ楕円)、棘突起、Luschka関節 |
| 側面(Lat) | 椎体の高さ、椎間腔、頸椎の前弯、すべり |
| 斜位(Oblique) | 椎間孔(頸椎)、関節突起間部(腰椎=スコッチテリア) |
正面像での椎弓根
正面像では、椎弓根が椎体の中に左右一対の楕円として写ります。この見え方は診断の手がかりになります。
- 左右の椎弓根の間隔が広がっている → 脊柱管内の腫瘍などを疑う
- 椎弓根の片方が消えている(winking owl sign)→ 転移を疑う
斜位像での椎間孔
椎間孔は、上下の椎弓根にはさまれた神経根の通り道です。正面からでも側面からでも、ほかの骨と重なって見えません。
頸椎では斜位像で、楕円形の穴としてはじめてよく写ります。頸椎症で椎間孔が狭くなっていないかを見るには、斜位撮影が必要になります。
まとめ
- 脊柱は 頸椎7・胸椎12・腰椎5。頸椎前弯・胸椎後弯・腰椎前弯のS字で衝撃を吸収する
- 椎骨は 椎体(支える)+椎弓(守る)。囲まれた椎孔を脊髄が通る
- 横突孔は頸椎だけにあり、椎骨動脈が通る
- Luschka関節も頸椎だけ。骨棘ができると椎間孔を狭くする
- 胸腰椎移行部(Th11〜L1) は、動かない胸椎と動く腰椎の境目で力が集中し、椎体骨折の好発部位になる
- 椎間孔を見るなら斜位。腰椎斜位のスコッチテリアの首輪は脊椎分離症のサイン
脊椎は「形」に理由があります。支える・守る・動く・通すという役割から考えると、細かい名前もつながって見えてきます。