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基礎医学

上肢・下肢の骨と関節(腱板・手根骨・半月板・足根骨)

四肢の骨と関節は、国家試験で解剖単独でも、画像問題でも問われる分野です。手根骨8個・足根骨7個のように「数と名前を覚えるだけ」に見えますが、実際に問われるのは どこにあるか・何が通るか・なぜそこが壊れるか です。

この記事では、肩・肘・手・膝・足の順に、形にどんな意味があるのかから整理します。丸暗記ではなく、理由から引き出せるようにするのが狙いです。

まず大原則:橈骨は母指側、尺骨は小指側

上肢の問題は、ほぼすべてここから出発します。

  • 橈骨(とうこつ) … 母指側=外側。手のひらを前に向けた姿勢(解剖学的正位)で、体の外側にある
  • 尺骨(しゃっこつ) … 小指側=内側

」の字は「とう」と読み、母指(おやゆび)とセットで覚えます。この対応さえ崩れなければ、肘でも手首でも迷いません。

下肢も同じ構造です。

  • 脛骨(けいこつ) … 内側。体重を支える太い骨
  • 腓骨(ひこつ)外側。細い骨で、体重はほとんど支えない

X線写真で左右どちらの手足かを判断するときも、この「細い骨がどちら側にあるか」が最初の手がかりになります。

肩:腱板は4つ、切れるのはほぼ棘上筋

腱板(けんばん、ローテーターカフ) は、肩甲骨から起こって上腕骨頭を包み込む4つの筋の腱です。上腕骨頭を関節窩に引きつけて、肩がはずれないように安定させています。

肩甲骨のどこからどこに付く位置
棘上筋棘上窩(肩甲棘の大結節
棘下筋棘下窩(肩甲棘の大結節後ろ
小円筋肩甲骨の外側縁大結節後ろ下
肩甲下筋肩甲下窩(肩甲骨の前面小結節

覚え方は 「前が肩甲下筋、上が棘上筋、後ろが棘下筋・小円筋」。大結節に付くのが3つ、小結節に付くのは肩甲下筋だけ、という非対称も出題されます。

右肩を後ろから見た腱板 右肩を背側から見た解剖図。肩甲棘の上にある棘上筋は、肩峰の下をくぐって上腕骨の大結節に付く。肩甲棘の下には棘下筋が広がる。棘上筋腱が肩峰と上腕骨頭にはさまれる構造が、腱板断裂の大半が棘上筋に起こる理由である。 棘上筋 肩甲棘の上から起こる 肩甲棘 棘下筋 鎖骨 肩峰 下を棘上筋腱が通る 大結節 棘上筋腱が付く 上腕骨
図1:右肩を後ろから見たところ。棘上筋は肩甲棘の上から起こり、肩峰の下をくぐって大結節に付く。この「くぐる」構造が弱点になる。

なぜ棘上筋ばかり切れるのか

腱板断裂の9割以上が棘上筋に起こります。理由は図を見れば明らかで、棘上筋腱だけが肩峰の下をくぐるからです。

腕を上げると、棘上筋腱は肩峰(上)と上腕骨頭(下)にはさまれます。この繰り返しですり減っていくのが肩峰下インピンジメントで、進行すると断裂します。ほかの3つは肩峰の下を通らないので、この機序が起きません。

だから肩のMRIは棘上筋が主役です。斜位冠状断(肩甲棘に沿った断面)で撮ると、棘上筋を起始から大結節への付着部まで一本の線として追えます。

肘:小頭は外側、滑車は内側

肘関節は 上腕骨・橈骨・尺骨 の3つで作られます。ここでも「橈骨は母指側=外側」から出発します。

  • 上腕骨小頭 … 遠位の外側にある球状の関節面。橈骨頭と関節する
  • 上腕骨滑車 … 遠位の内側にある糸巻き状の関節面。尺骨と関節する
  • 外側上顆・内側上顆 … 遠位で内外に突出する部分。内側上顆の後ろを尺骨神経が通る
  • 肘頭 … 尺骨の近位端の大きな突起。肘の後ろで触れるところ

「小頭は外側で橈骨と、滑車は内側で尺骨と」 をセットで覚えます。橈骨は母指側なので、橈骨頭が当たる小頭も自動的に外側、と導けます。

肘をぶつけたときにしびれるのは、内側上顆の後ろを走る尺骨神経が骨に直接あたるからです。ここは皮膚のすぐ下を神経が通る場所で、俗に「ファニーボーン」と呼ばれます。

手根骨:8個を2列で覚える

手根骨は8個あり、近位列4個・遠位列4個の2列に並びます。

覚え方は 「舟・月・三角・豆/大・小・有頭・有鉤」。母指側から小指側へ、近位列→遠位列の順に唱えます。

右手の手根骨8個 右手の手根骨を名称付きで示した図。近位列は母指側から順に舟状骨・月状骨・三角骨・豆状骨、遠位列は大菱形骨・小菱形骨・有頭骨・有鉤骨。母指側に橈骨、小指側に尺骨がある。舟状骨は骨折の好発部位。 橈骨 月状骨 尺骨 舟状骨 骨折の好発部位 大菱形骨 小菱形骨 三角骨 豆状骨 有鉤骨 有頭骨
図2:右手の手根骨8個。近位列=舟状骨・月状骨・三角骨・豆状骨、遠位列=大菱形骨・小菱形骨・有頭骨・有鉤骨。母指側から小指側の順。

押さえるべき3点です。

  • 舟状骨は骨折の好発部位。転んで手をついたときに折れる。血流が遠位から入るため、近位側が壊死しやすく偽関節になりやすい。初回のX線で写らないこともあり、要注意骨折として知られる
  • 豆状骨は三角骨の手前(手のひら側)にある。正面像では三角骨に重なって写る
  • 足根骨にも「舟状骨」がある。名前が重複するのはこれだけ

手根管:なぜ正中神経だけがしびれるのか

手根骨は平らに並んでいるのではなく、手のひら側に凹んだアーチを作っています。そのアーチの両端を橋渡しするように、屈筋支帯(横手根靱帯) という丈夫な帯が張っています。

骨のアーチ(床と壁)+屈筋支帯(天井)=手根管(手根トンネル) です。

手根管の横断面 手首の横断面図。手のひら側が上。手根骨がアーチ状に並んで床と壁を作り、屈筋支帯が天井としてふさぐことで手根管ができる。中を9本の屈筋腱と正中神経が通り、正中神経は屈筋支帯のすぐ内側にあるため最初に圧迫される。尺骨神経と尺骨動脈は手根管の外を通るため障害されない。 手のひら側 尺骨動脈 尺骨神経 トンネルの外 手根骨 アーチ状に並ぶ 屈筋支帯 =横手根靱帯 正中神経 支帯のすぐ内側 屈筋腱(9本)
図3:手根管の横断面。手根骨のアーチを屈筋支帯がふさいでトンネルになる。正中神経は支帯のすぐ内側にあり、逃げ場がない。

トンネルの中を通るのは、9本の屈筋腱(浅指屈筋腱4・深指屈筋腱4・長母指屈筋腱1)と、正中神経1本だけです。

ここで決定的なのは、正中神経が屈筋支帯のすぐ内側にいることです。屈筋支帯は伸びない丈夫な帯なので、トンネルの中身がむくんだり腱鞘が腫れたりすると、内圧が逃げ場を失って、いちばん天井側にいる正中神経が押しつぶされます。これが手根管症候群で、母指から環指のしびれが出ます。

一方、尺骨神経は手根管を通りません。屈筋支帯の外側(手のひら寄り)にある別の通り道=ギヨン管(Guyon管) を通ります。図でも、尺骨神経と尺骨動脈がトンネルの外にあるのが分かります。だから手根管症候群では小指はしびれません

膝:外側半月板はO字、内側半月板はC字

半月板は、大腿骨と脛骨のあいだにはさまる線維軟骨の板です。丸い大腿骨顆と平らな脛骨高原のすき間を埋めて、接触面積を広げて荷重を分散させるのが役割です。

内外で形がはっきり違います。

  • 外側半月板O字に近い、ほぼ閉じた輪。前後の付着部が近く、よく動く
  • 内側半月板C字の開いた三日月。内側側副靱帯と関節包にがっちり癒着していて、あまり動かない
右膝を前から見た半月板と十字靱帯 右膝関節を前方から見た解剖図。大腿骨を持ち上げて脛骨高原を見せている。外側半月板はO字に近い閉じた輪、内側半月板はC字の三日月で、形がはっきり異なる。中央では前十字靱帯と後十字靱帯が交差する。外側には細い腓骨がある。 外側 内側 大腿骨 外側半月板 O字(閉じた輪) 腓骨 十字靱帯 前十字と後十字が交差 内側半月板 C字(開いた三日月) 脛骨
図4:右膝を前から見たところ。外側半月板はほぼ閉じた輪、内側半月板は開いた三日月。中央で十字靱帯が交差する。

この動きの差が、そのまま損傷しやすさの差になります。逃げられない内側半月板のほうが損傷しやすい、というのが原則です。

十字靱帯

前十字靱帯(ACL)後十字靱帯(PCL) は、関節の中央で立体的に交差しています。名前は脛骨側の付着部が前か後ろかで決まります。

  • 前十字靱帯 … 脛骨の前方から、大腿骨外側顆の後方へ。脛骨が前へずれるのを止める。スポーツ外傷で断裂が多い
  • 後十字靱帯 … 脛骨の後方から、大腿骨内側顆の前方へ。脛骨が後ろへずれるのを止める

MRIの矢状断では、前十字靱帯は「脛骨の前方から大腿骨外側顆の後上方へ斜めに走る、まっすぐな低信号の索」として見えます。

足根骨:7個と、2本の関節線

足根骨は7個です。手根骨の8個と間違えやすいので、「手が8・足が7」とセットで覚えます。

後ろから前へ、距骨・踵骨 → 舟状骨・立方骨 → 楔状骨3個 と並びます。

右足の足根骨とショパール関節・リスフラン関節 右足を上から見た解剖図。かかとの踵骨、その前上方の距骨、前方の舟状骨と外側の立方骨、3個の楔状骨で足根骨7個。ショパール関節は距骨・踵骨と舟状骨・立方骨のあいだ、リスフラン関節は楔状骨・立方骨と中足骨のあいだを横切る。 後方(かかと) 前方(つま先) 距骨 舟状骨 楔状骨 内・中・外の3個 中足骨 踵骨 立方骨 ショパール関節 後ろ寄りを横切る リスフラン関節 前寄りを横切る
図5:右足を上から見たところ。足根骨は7個。ショパール関節が後ろ、リスフラン関節が前を横切る。

足の甲を横切る関節線が2本あり、どちらも名前を問われます。

  • ショパール関節(横足根関節)距骨・踵骨舟状骨・立方骨 のあいだ。後ろ寄り
  • リスフラン関節(足根中足関節)楔状骨・立方骨中足骨 のあいだ。前寄り

覚え方は 「シ→リ」の順に前へ進む。五十音でシがリより先に来るのと、位置が後ろから前へ進むのが一致します。

まとめ

  • 橈骨は母指側(外側)、尺骨は小指側(内側)。下肢では腓骨が外側。すべてここから出発する
  • 腱板は4つ(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)。大結節に3つ、小結節に肩甲下筋
  • 腱板断裂の9割は棘上筋肩峰の下をくぐるのが棘上筋だけだから
  • 上腕二頭筋長頭腱は腱板ではない(頻出のひっかけ)
  • 小頭は外側で橈骨と、滑車は内側で尺骨と関節する
  • 手根骨は8個舟・月・三角・豆/大・小・有頭・有鉤舟状骨は骨折の好発で偽関節になりやすい
  • 骨年齢は手根骨(左手)で評価する
  • 手根管を通るのは正中神経と9本の屈筋腱尺骨神経はギヨン管を通るので手根管症候群で小指はしびれない
  • 外側半月板はO字、内側半月板はC字。動けない内側のほうが損傷しやすい
  • 足根骨は7個(手が8・足が7)。ショパールが後ろ、リスフランが前

四肢の解剖も、脊椎と同じく「形に理由がある」分野です。何が通るか・何にはさまれるかを意識すると、どこが壊れるかまで一本につながります。

過去問での問われ方は、第78回第77回第76回の解答・解説で確認できます。

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